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これから紹介していく詭弁戦略の名称は、筆者が勝手に付けたものも多く、正式なものではないことにご留意いただきたい。
ちなみに、虫めがね式詭弁の語は、阿刀田高『詭弁の話術』の命名によるものである。
虫めがね式詭弁とは、数多存在する事例のなかから、都合のいい事例だけを選び出し、あたかも自分の論理に正当性があるかのように見せかけるテクニックである。
このテクニックは、早まった一般化という誤謬を利用している。
具体例を見ていこう。
A. ペンギンは飛ぶことができない
B. ダチョウは飛ぶことができない
C. ペンギンもダチョウも鳥類である
D. それゆえ、鳥類は飛ぶことができない
これは、明らかに誤りだ。むしろほとんどが飛べる鳥類の中から、飛べない希少な例だけを選びだして、誤った一般化をさせているわけだ。
使用例
しかし、このような極端な例を挙げずとも、虫めがね式詭弁の事例は世の中に山ほど存在する。商品のコマーシャルは製品のいいところを大げさに語り、デメリットなどには触れもしない。これが行き過ぎると、誇大広告といった景表法案件になってくる。
先述の『詭弁の話術』は、虫めがね式詭弁の例として、新聞の報道写真を例に挙げている。新聞社が数多い取材写真の中から紙面に載せるものを選ぶ時には、当然記事の内容に合うものを選ぶことになる。総理大臣が災害現場を訪れる時には、厳しい顔をしている写真を選ぶだろうし、外交がうまく行ったニュースを報じるときは、自信満々の笑みを浮かべる総理の写真を選ぶだろう。だからといって、総理が被災地でずっとしかめ面をしていたとは限らないし、外遊先でいつもヘラヘラしていたわけでないだろう。もちろん、そのような取捨選択は、ニュースのわかりやすさのためには必要なものでもある。しかし、その選択が、新聞社が「どのようにニュースを報じたいか」という方向に偏ることも少なからずあるだろう。
対策
虫眼鏡型の詭弁の弱点は、反証に弱いところにある。都合のいいところだけを切り取って見せているため、都合の悪いところを見つけられては困るわけだ。そのため、虫眼鏡型詭弁の使用者は、検証のしにくいことを利用する場合も往々にしてみられる。いわゆる「トンデモ」系の健康食品などが、検証のしにくいデータを持ち出すのはそのためである。
虫めがね式詭弁術について考える際には、以下のことも頭に入れておきたいところだ。最後に、『詭弁の話術』を引用しよう。
「人間がいろいろなテクニックを駆使して、他人を自分の信じさせたい方向へ誘導するのは、ごく、ごく自然なことだからである。そのテクニックがどこまでが許され、どこからが許されないのか、その判断は大変むつかしい。むしろ新聞の報道写真のような、単純明快なものの中にも詭弁的メカニズムが介入できること、それを知っておくことのほうが大切である。」